抄録
上顎前歯部唇側にMille rclass I (垂直的な歯肉退縮量が4.0mm以下の辺縁歯肉退縮) を認めた18歯, 被験者12名に対して, 半月状歯肉弁歯冠側移動術による露出歯根面の被覆を行い, 術後18ヵ月における臨床的評価を行った。臨床的評価の基準となる歯周病学的パラメーターとして, 垂直的歯肉退縮量 (VRD), プロービングアタッチメントレベル (PAL), 角化組織の幅 (KTW), プロービングポケットデプス (PPD) を術前および術後6ヵ月ごとに測定した。なお, 測定に際してはプロービングによるポケット底部への負荷圧を20gに保つことのできるTPSプローブを用いた。その結果, 術後18ヵ月における垂直的根面被覆量は平均1.8mm (92.1%の垂直的根面被覆率), プロービングアタッチメントゲインは平均1.9mmであり, ともに術前に比べ統計学的に有意差を認めた (p<0.0001) 。一方, 平均0.4mmのKTWの増加, 平均0.2mmのPPDの減少を認めたが統計学的な有意差は認められなかった。さらに, これらの各パラメーターを天然歯群と補綴歯群とで評価したところ, 天然歯群の方でわずかに良好な結果が得られたが統計学的有意差は認められなかった。