PLANT MORPHOLOGY
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学会賞受賞者ミニレビュー
シロイヌナズナの頂端―基部軸形成を担うWRKY2-WOX8転写因子カスケード
植田 美那子
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2012 年 24 巻 1 号 p. 89-96

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抄録

被子植物はさまざまな形態を有するが,それらは全て体軸に依存して形成される.体軸のなかで最も早期に形成されるのが頂端―基部軸であり,その発生は受精卵の極性にまで遡ることができる.受精卵は不等分裂をおこない,生じた頂端細胞と基部細胞が個々の発生運命に従って精緻な細胞分裂・分化を経ることで,植物体の茎頂―根端パターンが構築される.しかしながら,受精卵の極性化や不等分裂の分子機構はいまだ不明であり,それらがその後のパターン形成にどう関与するかも分かっていなかった.そんななか,我々はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の受精卵と基部細胞の系譜で働くWRKY2転写因子が,受精卵の極性化と胚のパターン形成をともに制御することを見出した(Ueda et al. 2011).本総説では,その発見の経緯を概説するとともに,WRKY2を起点とする転写因子カスケードが頂端―基部軸を形成するしくみを明らかにするためには,今後どのように研究を展開すべきかについて,近年開発の進んできた新たな実験系を紹介しつつ考察したい.

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© 2012 日本植物形態学会
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