PLANT MORPHOLOGY
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tRNAの成熟化と核—細胞質間ダイナミクス
吉久 徹
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2018 年 30 巻 1 号 p. 37-58

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抄録

翻訳因子として必須なtRNAは,その基本的な重要さゆえ,比較的一定な翻訳環境を提供するための「変わらない分子」と見られてきた.しかしtRNAは,80ヌクレオチド程度と短いRNAながら多様かつ多段階のプロセシングを受けることが必要で,極めて変化に富んだ成熟過程を経る.転写に始まる各プロセスは核内でもその場が巧妙に配置され,さらに一部のステップは細胞質で行われること等が今世紀になってから次々と判ってきた.これに並行して,tRNAは成熟化の過程で,また,成熟化後もダイナミックに細胞内を動き回る姿も明らかとなった.加えて近年,tRNAの量自身が細胞内外の環境で制御される可能性も報告され,tRNAの持つイメージが変わりつつある.本稿では,最近注目されるようになってきたtRNAを巡る様々なダイナミクスのうち,tRNAの成熟化といった分子の形のダイナミクスと細胞内の空間的なダイナミクスについて,特に成熟過程で重要な核を中心とした現象について概覧し,今後のtRNA研究の展開を考えるための土台を提供したい.

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© 2018 日本植物形態学会
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