抄録
土木の本領である国土の開発は、それが国家的ないし国民的営為であるにもかかわらず、各事業計画が単体で検討され、総合的・長期的な視野が導入されることは時代を追うごとに少なくなっている。また、技術者や国民の内に存在する連帯感や国家発展への意志が国土開発に与える影響も、考慮されることは稀になりつつある。本論考では、日本の近現代史において明治の開国期、戦後の復興期と並んで旺盛な国土開発が行われた大日本帝国期の満洲開発を対象として、総合的・長期的な視野、技術者や国民の内に存在する連帯感や国家発展への意志等がどのような態様をとって国土開発の基礎条件となったかを日本語文献を用いて考察する。