抄録
近年、少子高齢化やCOVID-19の影響により、医療サービスの重要性はより顕著になっている。慢性的専門医師不足や高額医療機器の稼働率低迷により、現在の医療体制を維持するには膨大な予算が必要になる。加えて、地域保健医療計画により医療圏という地域制約や病床数の総量規制が課されており、病院誘致のハードルは非常に高い。しかし今後、患者という需要サイドと病院という供給サイドを橋渡しする交通政策・広域連携を強化していけば、医療サービスは着実に向上する。医療サービスの充実度の評価には、従来指標として病院数や医師数といった指標が用いられた。しかし従来指標では行政区域外の情報が無視され、行政区域を越えて病院を利用するという日常的な様子が反映されないなどの欠点がある。そこで本研究では、地域医療の評価に対して、新指標として、病院へのアクセスに着眼する。茨城県内の44市町村を対象に、市区町村またぎを考慮した到達圏に基づく面積カバー率と人口カバー率を、各自治体の病院へのアクセスのしやすさの指標とし、地域医療の評価を行った。加えて、従来指標と新指標を継続性や需給バランスなどから比較し、両指標間の相関により従来指標が新指標の代替になり得ないことを示し、新指標の意義を明らかにした。