抄録
リウマチ熱は先進国で激減したが,発熱や多関節炎の鑑別診断において重要な疾患の一つで,心炎
合併の有無が予後に大きく影響する.我々は経過中に心炎を合併したリウマチ熱症例を経験したので
報告する.症例は6歳男児.発熱,咽頭痛,多関節腫脹及び疼痛を認め当院受診した.入院後は非ス
テロイド性抗炎症薬(NSAIDs)内服を開始した. CRP高値,赤沈亢進,抗ストレプトリジン-O(ASO)
高値を認め,Jones基準からリウマチ熱と診断した.関節炎所見・CRP値・血沈値はNSAIDs開始後
すぐに改善したが,心臓超音波検査所見とBNP値上昇から心炎合併を疑い,ステロイド内服と高用量
アスピリン内服に変更した.変更後は徐々に心臓超音波検査所見・BNP値は改善した.我々の検討では,
インターロイキン-6(IL-6)・インターフェロン-γ(IFN-γ)などの炎症性サイトカインはNSAIDs開始
後に減少したが,血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は増加した.ステロイド開始後にVEGFは減少した.
リウマチ熱の心合併症のバイオマーカーにVEGFが有用である可能性が示唆された.