霊長類研究 Supplement
第20回日本霊長類学会大会
セッションID: A-3
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口頭発表
自分の足と遊ぶ
-チンパンジーのワカモノ雄による想像的な遊び-
中村 美知夫
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抄録
ヒト以外の霊長類が、その場にない物や相手を想像できるのかどうかについては賛否が分かれる。言語研究などの対象となった、いわゆる「文化化された」類人猿については、想像的な遊びの事例が数多く報告されている。しかし、その大部分は、玩具などの人工物を想像する(例:その場にない引き車を引っぱるふりをする)か、もしくは人工物に対して向けられる(例:人形とレスリングごっこをする)、というものである。したがって「文化化」がこのような現象を引き出しているという懐疑論に対しては無力である。一方、野生下からの想像を示唆する報告例はそれほど多くはない。チンパンジーでは、「アリを釣るふり」「太枝などをアカンボウとみなす遊び」「枝相手のレスリングごっこ」などの事例が報告されているが、このうちのいくつかについては、報告者たち自身もそれ以外の解釈が可能であることを認めている。本発表では、2003年2月18日にギニア共和国ボッソウで観察された、チンパンジーのワカモノ雄(ポニ:10歳)による想像的遊びを示唆する事例を紹介する。この独り遊びでは、自分の足に対して、「噛みつく」「手で叩く」「抱えて自分の方に近づける」「もう一方の足で踏む」などの行動や「プレイパント」が観察された。この遊びは10分間ほど継続し、この間数メートルのところにオトナ雄がいたが、終始寝ており、交渉は見られなかった。 本事例についても、完全に他の解釈を排除できるわけではない。しかしながら、観察された行動パターンの多くが、通常社会的遊びにおいて相手に対して向けられるものであった。このことは、その場にいない相手が想像されていることを示唆する。また、この遊びでは、行動の直接的なターゲットが、他の物体ではなく自分自身である、という点がこれまでの観察事例と大きく異なる。
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© 2004 日本霊長類学会
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