抄録
ニホンザルによる農作物の至近的な被害の発生要因を探る試みは少ない。そこで、サルの農地への嗜好性と農地での性年齢ごとの行動差異を明らかにすることにより被害発生の程度に影響を与える要因について考察したい。対象群である仙台市西部に生息する奥新川A群(96頭)は、約8年前から農作物に加害するようになった。もっとも被害が深刻な8月~10月の間に群れを追跡して、サルが農地に出現したら出没個体の性年齢を記録し、ランダムに個体1頭を選択しスキャニングした。これらから出現した農地の物理条件(農地から人家及び林縁までの最短距離、農地面積)と農地滞在時間、出現頭数、行動の関係を調べた。調査の結果、群れの8月~10月の行動圏のコアエリアは3つにわかれ、そのなかにほとんどの農地が含まれていた。出没した農地では、林縁からの距離が遠く・人家から近いと出現しにくく、逆に林縁からの距離が近く・人家から遠いと出現しやすい傾向があった。また、このとき出現した個体の性年齢によって同時に出現する個体数と構成、周辺を見回す(Scaninng)回数に差が見られ、農地の物理的条件との関係性が見出された。これらから、農地に依存性の高い群れにおいて、出現する農地の嗜好性は物理的条件のより動機付けされるが、それは各個体間で現れる行動の差異によって影響を受けると考えられる。また、結果的に各個体の行動差によって被害の発生状況が変化する可能性があることが示唆された。