抄録
(はじめに・目的)和歌山県下に生息するタイワンザル集団によるニホンザルの交雑化は在来固有生物種の遺伝子攪乱の顕著な例であり、日本霊長類学会はこれまで実態調査、捕獲事業等に関与してきた。和歌山県の捕獲事業が順調に進み、1999年に約200頭であった交雑集団から2002-2004年の間に295頭を捕獲することができたが、それにも関わらず、急速な繁殖力のためかなりの数の個体が残存した。本報告は、2004年9月に行った生息個体数調査結果とそれに基づく今後の交雑群の個体数増加の予測を示したものである。
(方法)調査は和歌山市大池地区のタイワンザル交雑群の分布域において、2004年9月20日から9月25日まで、区画法による群数調査、群追跡、待ち受けによる群個体数の直接カウント、聞き取り等による周辺地域群分布調査を総勢26名により行った。
(結果)群数は1999年における2群から分裂し4群となっていた。各群の個体数は、孟子1群:8-約30頭、孟子2群:9-30頭、沖野々1群:30頭、沖野々2群:3頭、合計:約50-80頭と推定され。
(考察)今後の個体数増加の推定および対策。これまでの調査により、本集団の年間個体数増加率は平均1.14倍と推定されている(大沢他, 2004)。それに基づくと2004年9月調査時における全群の推定値は51頭となる。今回の個体数調査および聞き込み調査の結果は、4群合計は約50-80となった。計算による7月の推定値51は、一応今回の調査の合計の幅の中に入ってはいるが、計算推定値より実測値が幾分多いといえよう。 今回の最大推定値約80から、今後の増加予測をすると2005年の出産後には91頭、2006年には104頭となる。さらに2016年には大量捕獲前の300頭を突破し、2020年には565頭という大群に成長する。 このように、現時点で捕獲を停止すると、これまでの捕獲の努力も数年で無駄に終わってしまうことになり、さらなる捕獲努力が望まれる。