霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: A-21
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口頭発表
マカクサル海馬体における脳由来神経栄養因子(BDNF)免疫構造の発達と老化
*林 基治伊藤 麻理子清水 慶子託見 健森 琢磨山下 晶子
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抄録
(目的)海馬体は、記憶、学習に関与する脳領域である。我々はカニクイザルの中枢神経系における脳由来神経栄養因子(BDNF)を定量し、海馬体に最も多く存在することを報告した(MoriT et al., 2004)。また近年BDNFはヒトのエピソード記憶に関わることが報告され(Egan MF et al., 2003)注目されている。今回、海馬体におけるBDNFの発達加齢への生理的役割を明らかにするため、その変遷過程を調べた。
(方法)胎生140日、生後7日、生後3ヶ月、生後4ヶ月、生後6ヶ月と成熟期(12才、14才)のカニクイザルと10、26、30、32才のニホンザルを用いた。2%パラホルムアルデヒド、0.5%グルタルアルデヒドで固定した海馬体の40ミクロン切片についてBDNF免疫活性を調べた。
(結果)カニクイザル歯状回顆粒細胞やCA1、CA3の錐体細胞におけるBDNF免疫活性は、胎生140日から生後6ヶ月まで順次増加し成熟期には減少した。また顆粒細胞におけるBDNFの細胞内分布変化を調べると、免疫活性は発達とともに細胞体から樹状突起に移行した。一方ニホンザルの海馬体では、10才に比較して26才以上ではBDNF免疫活性が顕著に減少した。特に30才以上の歯状回における免疫活性は10才の約1/3に減少していた。
(考察)歯状回BDNF免疫活性が、シナプス数が一過性に増加する生後6ヶ月ごろまで増加し、それとともに細胞体から樹状突起へ移行する事実から、BDNFがシナプスを介した神経回路網形成に関与することが考えられる。また脳の老化とともにBDNF免疫活性が低下したことと、アルツハイマー病海馬体のBDNF遺伝子発現の顕著な減少が観察されている事実から(Phillips HS et al., 1991)、老齢マカクサルは本脳疾患のモデル動物として重要であると考えられる。
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© 2005 日本霊長類学会
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