霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: B-01
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口頭発表
マイクロサテライトDNAマーカーを用いたワオキツネザルの父子判定
*市野 進一郎川本 芳宮本 直美小山 直樹平井 啓久
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抄録
(目的)複雄複雌群を形成する霊長類のオスは、高い繁殖成功を得るうえで様々な交尾戦略をとっていると考えられる。昼行性の原猿であるワオキツネザルの群れは、サイズが15頭程度の複雄複雌群である。オナガザル類と異なり、(1)群れ内のオスとメスの数がほぼ等しい、(2)メスがオスよりも優位、(3)交尾期が非常に短い、などの特徴がある。これらの特徴は、ワオキツネザルのオスの交尾戦略や繁殖成功に影響を与えると思われるが、どのようなオスが実際に子供を残しているかはほとんど分かっていない。本研究では、マイクロサテライトDNAマーカーを用いて、野生ワオキツネザルのオスの繁殖成功がオスの属性や交尾行動とどのように関係しているかを調べた。
(方法)マダガスカル南部のベレンティ保護区に生息するC2A群を対象に調査をおこなった。C2A群は、1989年から小山直樹らによって個体識別に基づく継続調査がおこなわれており、多くの個体の年齢、血縁関係、優劣順位、滞在年数などが明らかになっている。交尾行動の観察は1998年と1999年の交尾期におこなった。遺伝子分析に用いた試料は、1997-1999年の捕獲調査で採集された血液から調製したゲノムDNAで、マイクロサテライトDNAの多型を検索し、父性を判定した。
(結果と考察)メスが発情した時、オスどうしは激しく争い、優位なオスが必ずしも最初に交尾したわけではなかった。1998年と1999年にC2A群で生まれ、1年間以上生存した5頭の個体の父親が決定できた。これら5頭の父親は、中順位のオスで、最初に射精したと思われるオスだった。このように、最初に交尾することがワオキツネザルのオスにとって最も重要な交尾戦略のようだが、優位なオスが必ずしも最初に交尾できるわけではないようだ。
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© 2005 日本霊長類学会
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