抄録
哺乳類において、個体の栄養状態、とくに体重および脂肪の貯蔵は春期発動および月経周期維持との間に関連があることが知られている。主に脂肪細胞から分泌されるホルモンであるレプチンは、ヒトや齧歯類において体の成長発達や生殖機能の調節に関与していると考えられており、血中レプチン濃度は体格指数や体脂肪率と正の相関を示すことが報告されている。これらのことから、私たちはニホンザルの季節繁殖発現機構を知ることを目的として、生殖機能調節におけるレプチンの関与について調べた。
京都大学霊長類研究所の屋内個別飼育ケージにて飼育されている性成熟後のサルのうち、季節繁殖を示すニホンザル、周年繁殖を示すカニクイザルを用い、無麻酔で一年を通して採血をおこなった。得られた血漿を用いて、血中レプチン量を放射免疫測定法(RIA法)により測定した。さらにメスでは血中黄体ホルモン (LH)、エストラジオール 17-β、プロジェステロン値を、オスではLHおよびテストステロン値をRIA法にて測定し、得られたニホンザルとカニクイザルの結果について比較検討をおこなった。その結果、いずれの種も血中レプチン値はオスよりメスが高値を示した。また、周年繁殖を示すカニクイザルではオス、メスともに血中レプチン値は一年中ほぼ一定であった。一方、季節繁殖を示すニホンザルではオス、メスともに血中レプチン値に季節性変化が見られた。また、このニホンザルに見られた血中レプチン値の変動は血中ステロイドホルモン値の変動と同様の傾向を示した。
これらの結果および先行研究結果から、マカクザルにおける血中レプチン値には種差が見られ、繁殖季節と関わりがあることが分かった。しかし、他の生殖関連ホルモンのような直接的な働きはなく、単体で機能してはいない可能性あることが示唆された。