霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: C-07
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口頭発表
チンパンジーにおけるアラビア数字系列の記憶
*井上 紗奈松沢 哲郎
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抄録
2004年の4月から、チンパンジーを対象に、アラビア数字の系列学習をおこなってきた。本研究では、1から9までのどのような数字の組み合わせでも小さい順に選べるようになった1個体(アユム;5歳0ヶ月、2005年4月現在)について、数字系列の記憶容量を検討した。装置は、タッチパネル付きコンピュータをもちいた。まず課題は、2個の数字からおこなった。たとえば、3と5が画面にあらわれ、3に触れるとそれが消える、と同時に、画面に残った5が白く塗りつぶされた四角形に置き換わった。あとはその四角形に触れるとそれも消えて、正解のチャイムが鳴り報酬がもらえた。ただし先に5に触れると画面から数字が消えて、ブザーが鳴った。つぎに3個の数字記憶課題をおこなった。たとえば2と4と7が画面にあらわれ、2に触れるとそれが消える、と同時に、画面に残った4と7が白く塗りつぶされた四角形に置き換わった。あとは四角形に置き換わる前の、数字の小さい順に白い四角形に触れてすべて消すと正解となった。ただし、最初の数字を選ぶ前にどの数字が画面のどの位置にあるかを記憶していなければ、正解するのはむずかしい。つづいて4個、5個の数字記憶課題を順次導入した。そこで、これらの課題の正答率を分析したところ、2個、3個課題については、数字が四角形に置き換わらない課題と変わらず、正答率は90%以上だった。4個、5個課題については、平均70%を超える正答率だった。また、すでにこの数字記憶課題を経験しているアイ(28歳)とも正答率を比較した。アイは、4個課題の正答率は安定して高いのに対し、5個課題になると正答にばらつきがでて正答率も急に落ちた。一方、アユムは、5個課題であっても4個課題とほぼ変わらなかった。これらのことから、5歳のアユムが、大人のアイと同等かそれ以上の数字系列の記憶容量をもち、それは少なくとも5個以上であると考えられる。
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© 2005 日本霊長類学会
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