抄録
(目的)群れで生活をする動物の行動の基盤を理解するためには個体間の血縁度を知ることは重要である。一般にオスが分散する種ではオス同士の血縁度が低く、メス同士の血縁度が高いことが予測されるが、ニホンザルのように寿命の長い種では長期にわたる観察でもその血縁度を知ることは難しい。本研究はDNAサンプルを用いてヤクシマザルの血縁度を測り、その群れ構造を解析しなおすことを目的としている。
(方法)屋久島の半山地域に生息するヤクシマザルの野生群4群および2003年秋にその周辺に現れた群れ外オス17頭を対象に核遺伝子の中のマイクロサテライト領域における多型を調べた。血縁度はQueller & Goodnight(1989)の計算式をもとに血縁度解析ソフトRelatedness5.0を用いて計算した。
(結果)対象群においてはオスメス共に血縁度が低いことが分かった。また親子や母親を同じとする姉妹間では血縁度が高くなるが、同じ年に生まれた子供同士の血縁度は低かった。
(考察)群れの中でのメスの血縁度を低くする要因として、群れ外オスとの交尾の効果で同じ年に生まれた子供が父親を同じくする例がほとんどないことが考えられる。一方で、この個体群は数年前に大量死を経験しており、オトナメスに関して言えば、母親を同じくする姉妹が群れの中にいない例が多い。よってオトナメスの血縁度の低さは一時的なものであるとの解釈も可能かもしれない。