霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: Q-05
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ポスター発表
滋賀県において農業被害を発生させているある群れの集中利用域の特徴について
*大井 徹
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抄録
ニホンザルによる農業被害の軽減を生息地管理によって果たせるかどうか検討するため、被害を発生させている群れの行動域利用の実態把握を目的とした。
 滋賀県高島市で被害を起こしている4群(TK-A:約30頭,TK-B:約65頭,AD-A:約160頭,AD-B:約45頭)の1-2年間にわたる位置、食性、行動を記録した。位置データはArcView3.2上でAnimal Movement Program (Hooge & Eichenlaub, 1997)の固定カーネル法を用いて季節毎と一年を通しての行動域を算出した。さらに、この行動域内の植生を環境省の現存植生図と重ね合わせ、行動域内の植生の種類を判別するとともに植生毎の面積を算出した。
 1年を通しての50%行動域(群れの集中利用域)は、農地や住宅地と隣接しており、面積はTK-A:270ha、TK-B:250ha、AD‐A:210ha、AD-B:45haで、モチツツジーアカマツ群集が52∼67%を占めた。また、50%行動域に全行動域の中でも特に偏って分布する群落を「群落の偏り分布指数」で判定すると竹林、クヌギーコナラ群集、落葉果樹園が挙げられた。特に竹林は4つの群れの行動域中3つで「偏り分布指数」が高く、群れを誘引している可能性が高いと考えられた。今後、放棄竹林の生産性、また群れの分布拡大と竹林の分布拡大の関係について検討する必要がある。
 50%行動域面積の季節変化は、いずれの群れでも冬に小さくなる傾向があった。また、AD-Bを除く群れでは50%行動域の位置が季節によって変化したが、AD-Bでは四季を通じてほぼ同じであった。さらに、AD-Bは他の群れと比べて行動域面積が著しく狭いことが特徴的であった。AD-AとAD-Bが遭遇した場合、AD-BがAD-Aに追い払われており、AD-Bの行動域の特徴には群れ間関係が影響していることが示唆された。
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© 2005 日本霊長類学会
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