霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: A-14
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口頭発表
ニホンザルにおける上喉頭声道形状の成長変化
*西村 剛大石 高生國枝 匠矢野 航松田 圭司高橋 俊光
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抄録
ヒトの上喉頭声道は、咽頭腔が口腔とほぼ同じ長さの二共鳴管構造であり、その発達は話しことばの発達の形態学的基盤である。ヒトでは、生後、喉頭が口蓋に対して急速に下降する喉頭下降によって、咽頭腔が口腔よりも速く伸長し、9歳頃にこの構造が完成する。チンパンジーでも、ヒトと同様の咽頭腔の成長がみられる。それにともなって、喉頭蓋も軟口蓋に対して下降し、口腔咽頭腔が発達する。一方、口腔の伸長は、乳幼児期以降、ヒトでは鈍化するのに対して、チンパンジーでは以前と同様の伸長が続く。これらは、ヒト系統で起きた口腔の成長(顔面形状の成長)の変化が二共鳴管構造の完成におおきく寄与したことを示唆する。一方、喉頭下降現象は、少なくともヒトとチンパンジーの共通祖先はすでにもっていたと示唆されるが、それ以前の進化史はよく分かっていない。本研究は、2003年から2005年に生まれた各年2頭、計6頭のニホンザル乳幼児を対象に、毎月1回、磁気共鳴画像法を用いて頭頚部の連続断層画像を撮像し、ニホンザルにおける上喉頭声道形状の0から3歳までの成長変化を半縦断的に分析した。その結果、ニホンザルでは、ヒトやチンパンジーに比べて咽頭腔の伸長が鈍い一方、チンパンジーと同様の口腔の伸長が確認された。また、ニホンザルでは、分析した成長期間を通じて、喉頭蓋の軟口蓋に対する位置は変わらなかった。これらの結果は、ニホンザルでは、喉頭下降現象が起きないことを示している。よって、同現象は、おそらくヒト上科系統で顔面形状の進化とは独立に現れ、話しことばとは直接関係のない嚥下や呼吸などの機能に対する適応として進化したと考えられる。
本研究に実施にあたっては、文科省科研費(16000326)、21世紀COE(A14、 京都大学)、京大霊長研共同利用研究(3-1(2005)、 1-6(2006))より支援いただいた。
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© 2006 日本霊長類学会
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