抄録
日本各地の山村で猿害が問題化している。各自治体で様々な対策が採られているが、その効果について客観的な評価がなされていない。被害額は必ずしも実際の被害の程度を表していない。猿の出現頻度や出現頭数を客観的な指標として、各対策の効果を調べる必要がある。
八森町では3年の準備期間を経て2001年度から八森式猿追い上げボランティアを始めた。ボランティア隊員は、活動場所における猿の出現状況を日誌に記載してきた。その日誌を元にして猿の出現頻度・出現頭数の推移を調べることができる。追い上げボランティア、電気柵、奥山放獣の三つの対策について、その効果の測定を行った。
追い上げボランティアが入った全地区のデータをプールして各年を比較した。すると、2001年度から2002年度にかけて猿の出現頻度が激減し、以後は横ばいになっていた。電気柵の設置地区について、設置前後の年をプールして猿の出現頻度を比較した。電気柵設置によって猿の出現頻度が減少する傾向は見られなかった。各地区・各年について、一度に確認された最大猿頭数を比較した。奥山放獣を行っていない地区では10頭以上の集団が出現し続けている。奥山放獣を行ってきた地区では2005年度には多くて数頭の猿しか現れなくなっていた。
以上から次のようなことが示唆される。追い上げボランティアによって猿の出現頻度を一定値以下に下げることができる。だが、ボランティア隊員は常駐しないため、完全な猿害対策とはいえない。電気柵は、正しく設置・管理さえされていれば農作物を守ることができる。しかし、それでも猿は相変わらず電気柵の外に現れ続けており、人家に侵入し人を襲うかもしれない。奥山放獣によって猿の出現頭数を減らし、一回あたりの被害レベルを下げることができる。ただし、放獣できる奥山があるとは限らないため、他の自治体に適応するには修正が必要だろう。