抄録
屋久島西部海岸林ではニホンザルの生息密度が高いことが知られている。群れの遊動域は隣接群との重複割合が高いために、群れ間の出合い頻度が高く、群れ間競合の高いことが報告されている。また群れサイズと群れ間の出合い時の優劣は相関があるとされる。このことから群れサイズは群れの遊動域の利用様式に影響を与えることが予測される。土地利用様式が異なることで群れ密度が高まり、西部海岸林ではニホンザルの高密度の分布が維持されているのではないか。
2002年6月から9月に鹿児島県上屋久町の西部海岸林で遊動域が隣接するニホンザル三群(Momoe、Nina-A、B 群)を対象に調査を行った。三群はよく調査され、群れの構成がほぼ知られていた。高順位の非発情メスを中心に群れ追跡し、5分ごとにオトナメスを中心に半径20m近くにいる、オトナオス、コドモの行動を記録した。行動は、採食、休息(毛づくろい含む)、移動、その他(交尾含む社会的交渉、遊びなど)と判別した。また観察位置を50m四方に区切った地図上に記録した。
調査の結果、三群の土地利用様式は、次の特徴を示した。群れサイズは Nina-A群≧Momoe群>B群だった。遊動域の外郭は、比較的大きい二群は円状で、小さい一群は楕円状だった。大二群は遊動域広くを採食、休息に利用し、小群は採食場所と休息場所が異なり、ともに集中的に利用する傾向が見られた。一日の群れの行動は、大二群ではよく休息する時間帯がみられ、小群では採食、休息、移動行動が時間帯に関わらずみられた。
これらの結果から、広く遊動域を利用する群れの隙間の土地を小さな群れが集中的に利用する地点を持つように利用様式を変えていることが示唆された。群れサイズに応じた土地利用様式が、高い群れ間競合が推測されるにも関わらず、西部海岸林の高い密度をもたらしていると推察された。