抄録
目的: 医療行為の高度化が進む中、臓器移植の重要性が日々高まっている。臓器をそのまま凍結しておき、必要に応じて融解し宿主に移植することができれば、多くのヒトに臓器を提供することが可能になる。我々は、磁場を利用することで凍結の際に生成・成長する氷晶を小さく保つことで、組織の損傷を軽減させることをイメージし、主要器官の凍結に対する磁場の有効性を検討した。
方法: カニクイザルの卵巣、精巣、心臓、腎臓、皮膚の一部あるいは丸ごとを実験対象とした。凍結は0.2mTの磁場環境下で緩慢法により実施し、最終的には液体窒素内で保存した。なお、本法では凍結保護剤は使用していない。凍結した組織は37℃湯浴で急速に融解した後、細胞培養実験を行うことで増殖能が保持されているか否かを検討した。また、HE染色を実施し組織学的検索を行った。同様の検討をマウス卵巣においても実施した。
結果: 凍結融解後、細胞培養実験においてサル心臓、マウス卵巣から細胞の増殖が認められた。組織学的検索においては、サル、マウス卵巣では卵胞卵の透明帯の肥厚化、間質細胞・卵胞上皮細胞・黄体細胞の収縮が観察された。サル精巣では精細管内での精上皮系列細胞の収縮があり、核や細胞の輪郭が不明瞭であった。しかし、両種共に組織構造に大きな損傷はなかった。
考察: 本法により凍結融解した組織に生存細胞が存在することが確認できた。ヒトへの臨床応用を目指す場合、サル類を実験対象とする意義は大きい。今後さらに検討を重ねることで、様々な臓器の保存に有用な手法となる可能性が示唆された。