霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
セッションID: B-05
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口頭発表
歯牙からみたニホンザルの地域変異
*山本 亜由美國松 豊
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抄録
目的:歯牙のサイズとシェイプの2側面から、ニホンザルにみられる地域変異のありようとそれをもたらす要因について明らかにする。
 材料:15地域(下北、金華山、七ケ宿、日光、房総、神奈川、静岡、長野、白山、福井、小豆島、島根、高崎山、幸島、屋久島)由来のオトナのニホンザル450個体。
 方法:すべての歯種の近遠心径、頬舌径32項目をノギスで計測し、ペンローズのサイズ距離とシェイプ距離を求めた後、多次元尺度法により2次元展開した。サイズに関しては、歯冠面積の合計に対して説明変数として「最寒月の平均気温」、「最寒月の最大積雪量」、「餌付けの有無」、「地理的隔離の有無」を用いて重回帰分析も施した。
 結果と考察:歯牙サイズではオス、メスともに地理的隔離の効果が見られ、房総集団を含めた地理的に隔離された集団では歯牙が小さかった。さらに、メスでは最寒月の最大積雪量も歯牙サイズの増大に寄与していた。冬季における食物獲得の難易度がニホンザルの歯牙サイズに影響を与えている事が考えられるが、おそらくその影響はアカンボウや胎児を抱えて栄養条件の厳しいメスの方により強く現われるのであろう。歯牙のシェイプに関する分析では、多次元尺度法によって2次元展開した分布図において、オス、メスともに北関東(日光)から中国地方(島根)までの本州6集団が原点付近にひとつのまとまりを形成した。それ以外の集団は、この中核的なまとまりからそれぞれの方向に離れてプロットされた。東北地方、九州地方の内部の各集団は、それぞれ比較的近接した位置に現われた。ただし東北における金華山、関東における房総のように近接集団とはかなり隔たる例外も見られた。ニホンザルの地域変異に関する先行研究では頭骨の計測・非計測データの分析から「基幹集団」と「辺縁集団」という概念が考えられてきた。今回の歯牙計測値の分析も、基本的にはこの概念を支持するものである。
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© 2007 日本霊長類学会
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