霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
セッションID: B-04
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口頭発表
コロブス亜科の頭蓋形態変異-生態適応か系統発生学的拘束か-
*小薮 大輔清水 大輔大石 元治遠藤 秀紀
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抄録
 コロブス亜科(Colobinae)はアフリカからアジアにかけて広く分布する霊長類であり、他の霊長類に比べて葉食性が強い系統群とされるが、亜科内における頭蓋形態および体サイズは変異が著しいことが知られてきた。これまでその変異を生んだ要因は不明とされ、形態学の多くの学説を混乱させてきた。だが近年、亜科内の食性は果実食性、若葉食性、成熟葉食性、種子食性、雑食性など、多様であることが徐々に明らかになってきた。
 そこで、我々はコロブス亜科の頭蓋形態に見られる形態的多様性は、食物資源に対する適応進化の観点から説明しうるかどうか検討を行った。コロブス亜科内のアフリカコロブス亜族(Colobina)の2属6種、アジアコロブス亜族(Presbytina)の3属8種の頭蓋骨および下顎骨を材料として、種間の頭蓋形態の差は食性差を反映するのかをマンテル検定によって解析した。また、系統差による形態差への影響も同様にマンテル検定によって解析を行った。
 その結果、アフリカコロブス亜族の頭蓋形態差は食性差と有意に相関した一方で、形態差と系統差は有意な相関が見られなかった。逆に、アジアコロブス亜族の形態差は食性差とは有意な相関がない一方、形態差は系統差との有意な相関が検出された。つまり、アフリカコロブス亜族は系統的に近縁でなくとも食性が近い種同士は形態が収斂する一方、アジアコロブス亜族では食性が近いものでも形態は収斂せず、近縁種間ほど形態が類似することが示され、両系統群の頭蓋形態の進化パターンには大きな相違があることが認められた。アフリカコロブス亜族の頭蓋形態は各食性に応じて多様化したと推測されるが、対照的にアジアコロブス亜族の頭蓋は食性適応からは解釈ができず、系統性を反映すると結論された。
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© 2007 日本霊長類学会
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