霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
セッションID: B-19
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口頭発表
サル追い犬と群れの遊動域変更
*宇野 壮春伊沢 紘生藪田 慎司村瀬 英博大島 かおり
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抄録
脊梁山脈の東斜面、宮城県側にすむサルの群れは1985年前後までは山奥で生活し農作物被害を起こしていなかった。しかし、それらすべての群れ(計7群)は以後急速に下流域に遊動域を拡張し、個体数を増やしては分裂を繰り返し(現在計15群)、多大な農作物被害を発生させている。このような中、宮城のサル調査会は帝京科学大学及びNPO法人救助犬訓練士協会との共同研究プロジェクトとしてイヌをサル追い専門に訓練し、群れの遊動域を強制的に変更させ山奥へ追い上げるという試みを、2005年からの2年間試験的に実施してきた。選定した対象群は連続分布する群れの中で最も上流側に生息し、あまり人馴れしていない群れである(上流の群れ)。一方で、農地及びその周辺に年間を通して居つき人馴れしている群れ(下流の群れ)に対しては、イヌの効果を上流の群れと比較する試みを行った。その結果、上流の群れはイヌを放すと奥山の方へ一直線に逃げ出すが、下流の群れはスギ林やガケや深いヤブに逃げ込んでイヌをやり過ごした。また、上流の群れは追われる事に対して次第に警戒心を強めていき、遊動域を奥山の方へ拡張し、追い上げ後しばらく田畑に出没しなくなったが、下流の群れは遊動域の変更はごくわずかですぐに戻ってきた。田畑や民家周辺の食物はいったん馴じんだサルにとっては嗜好性が極めて高いからだろう。上流の群れも追い上げの期間が空くといずれ舞い戻ってきた。以上のことから、上流の群れに対してはサル追い犬でできるだけ継続的な追い上げを行いながら、奥山に拡張した遊動域を固定させるため最前線の農家の飼育犬をパトロール犬として訓練し、里とイヌの関係をサルに学習させることが今後必要になる。一方下流の群れに対しては効果的な防除策等を併用させながら若年個体を主なターゲットとして、まずは人や里への恐怖心を植え付けることが先決と考えられる。
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© 2007 日本霊長類学会
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