霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
セッションID: P-26
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ポスター発表
群れ間敵対交渉における「ただ乗り」問題:チンパンジーにおける音声再生実験による検討
*沓掛 展之寺本 研森 裕介松平 一成小林 久雄長谷川 壽一岡ノ谷 一夫
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抄録
 多くの霊長類において、群れ間の関係は敵対的である。群れのメンバーにとって、群れ間敵対交渉を行うことは、資源(餌や繁殖相手)の防衛という利益が存在する。しかし、同時に、敵対交渉に参加することには、時間やエネルギーの消費、怪我の可能性などのコストが存在する。防衛された資源をすべてのメンバーが利用できる場合、「ただ乗り」(利益を享受するが、防衛のコストは払わない)戦略が出現しやすいと理論的に予測される。では、どのような個体が、群れ間交渉への参加(または「ただ乗り」)をするのであろうか?
 本研究では、三和化学研究所チンパンジー・サンクチュアリ・宇土において、オスのみから構成される飼育チンパンジー二群(個体数A群9頭・B群5頭)を対象に、以下の二つの仮説を検証した。「順位仮説」によると、群れ生活によって得られる利益が、低順位個体よりも高順位個体において大きいため、高順位個体が高頻度で群れ間交渉に参加すると予測される。また、「不安傾向仮説」によると、不安傾向の高いオスがより高頻度で群れ間交渉を行うことが予測される。異なる群れとの遭遇状況を作り出すために、野生チンパンジーのパントフート音声を研究対象群に対して再生した。
 その結果、双方の仮説を支持する結果が得られた。すなわち、A群では、再生音声に対する警戒行動は、オス間順位と関係していなかった。しかし、刺激音声に対して高頻度で警戒をした個体は、パントフート音声以外の再生刺激(コントロール刺激)に対しても高頻度で警戒をしていたことから、不安傾向が高い個体であると推測される。また、B群では、高順位オスがもっとも高頻度で再生音声への警戒を行った。これらの結果から、チンパンジーにおいて、順位と不安傾向という二つの要因が群れ間交渉への参加に影響しているといえる。これらの個体要因によって、群れ間敵対交渉における「ただ乗り」問題は生じないのかもしれない。
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© 2007 日本霊長類学会
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