抄録
霊長類の固有背筋の比較機能形態学的な解析の出発点として,ニホンザル胸腰部固有背筋の筋束構成,筋構築,筋線維タイプ構成を検索してきた。固有背筋を構成する各筋は,起始停止を互いに異にする多数の筋束により構成される。したがって,起始,停止,走行中に越える関節等の基本的な解剖学的特徴も起始停止の異なる単一の筋束ごとに記載する必要がある。筋束長,筋線維部分の長さ,筋束長に占める筋線維部分の長さと腱部分の長さの比,筋束重量,単位長さ当たりの筋束重量といった筋構築学的測度は,筋の短縮量,発揮張力等の生体力学的特性と関連する。また,筋線維タイプ構成は収縮速度,代謝特性などの生理学的特性と関連する。ニホンザルの胸部の腸肋筋は比較的近くの分節間を連結する多数の筋束より構成され,また遅筋線維の割合が比較的多かった。これに対して胸部の最長筋は互いにより離れた分節間を連結する筋束より構成され,腸肋筋に比べ速筋線維の比率が高かった。また,腰部の仙棘筋は大きな筋量をもち,速筋線維の占める比率が比較的高かった。発表ではこれらの知見を紹介し,ニホンザルの胸腰部の固有背筋の機能形態学的特性について考察するとともに,今後の研究の課題について展望する。