抄録
アカゲザルは実験用霊長類として広く用いられているマカクザルである。当研究所でもインド及び中国由来のサルが,それぞれ地域ごとに繁殖コロニーとして維持されている。野生のアカゲザルは,その広い分布域ゆえに遺伝的にも多様であることが知られているが,こうした遺伝的多様性は,マカクザル繁殖コロニーにも存在すると考えられる。本研究は,当研究所のアカゲザルの遺伝的多様性に関する特徴を明らかにすることを目的とした。
インド群(n=48)および中国群(n=47)を研究対象とした。(1)ミトコンドリアDNA D-loop内のHSV1領域の塩基配列の分析:Smith & McDonough(2005)に記載されたプライマー及び条件を用いて,HSV1領域 約800bpをPCR増幅し,塩基配列を決定した。BLASTを用いて,当研究所のアカゲザルで見いだされたHSV1配列に近縁な塩基配列を検索し,その塩基配列をもつ個体の出身地域を調べた。(2)マイクロサテライトDNA多型の分析:昨年度の第24回大会で報告したマイクロサテライト,およびKanthaswamy et al.(2006)が提唱したstandardized marker set のマイクロサテライト計25遺伝子座の分析を現在すすめている。
インド群は9家系の母系で構成されているが,7種類のHVS1タイプが見いだされた。中国群においては7母系から3種類のタイプがみつかった。BLASTによる検索結果から,インド群のHVS1タイプのうち,4種類がハプログループ Ind1に属するもの,1種類がInd2,もう1種類がBurmに近縁であることがわかった。残りの1種は,他の6種類から約10%の違いをもつ隔たりの大きいタイプであった。中国群では3種類のハプロタイプが見いだされ,うち2種類がChiEのタイプ,1種類がChiW2に近縁であった。マイクロサテライトDNAの多型調査の結果についても報告する。