抄録
ブルーモンキーとレッドテイルモンキーが同所的に生息している地域では,2種がひとつの群れのように共に移動し採食する,いわゆる「混群」を形成することが知られている。これまでの混群研究では,異種が積極的に混群を形成していることを,群れの移動速度や密度を用いたモデルによって評価してきた。しかしモデルには,移動速度の変化が考慮できないなどの問題点が指摘されている。また,混群形成の積極性を論じる上では,混群状態がどのように維持されているのかを明らかにすることが重要であるが,その維持のメカニズムについてはほとんど明らかにされていない。本研究では,混群を形成するブルーモンキーとレッドテイルモンキーの移動ルートと移動速度の変化を明らかにし,2種の混群が積極的に形成されているかを,同所的に生息しており2種と同属のロエストモンキーの動きと比較して検討した。2004年9月から2005年2月,ウガンダ共和国カリンズ森林において,ブルーモンキー,レッドテイルモンキー,ロエストモンキーの群れ各1群を対象に調査を行った。3人の観察者が同時に3種の個体を追跡し,各群れの追跡個体の位置を5分ごとにGPSで記録した。その結果,3種の行動域は重複していたが,ブルーとレッドテイルの行動域の重複度がより高かった。また,ブルーとレッドテイルの2種間の距離は50 m以内であることが最も多く,ロエストと比較して2種の移動ルートはよく似ていた。2種間距離とそれぞれの移動速度を比較すると,ブルーの移動速度はどの2種間の距離にかかわらずほぼ一定であったが,レッドテイルの移動速度はブルーとの距離が近いときに速かった。同所的に生息している3種のうち,ブルーとレッドテイルによる2種の混群は,レッドテイルによってより積極的に形成されていると考えられた。本研究はJSPS-HOPEによる助成を受けて行われた。