抄録
本研究は,インドネシア,スラウェシ島南西部のカレンタ自然保護区に生息するムーアモンキー(Macaca maurus)の個体ごとのアクティビティを,他の個体のアクティビティとの関連で分析した。ムーアモンキーの群れは,まとまりを保ちながら採食し,休息し,移動する。群れ全体として移動や休息をするとき,どのような個体がイニシアティブをとり,どのような個体が群れの多数の個体のアクティビティと同調しないのか。
これらを明らかにすることは,群れのまとまりを維持するメカニズムの解明につながると考えられる。本研究の対象は,個体識別に基づいた観察がおこなわれていた,Bグループと呼ばれる群れである。1996年4月から5月のデータが分析に使用された。
群れの構成は,オトナオス4頭,コドモオス6頭,アカンボウオス5頭,オトナメス11頭,コドモメス4頭,アカンボウメス5頭の計35頭であった。データは5分間隔のスキャンサンプリングで収集された。5分の間に発見された個体の名前,アクティビティ(休息,採食,移動,その他),位置(地上にいるか樹上にいるか),近接個体および群れの広がりが記録された。
群れの多数の個体が休息する時に,そのアクティビティのイニシアティブをとっていた割合は,オトナオスの場合には平均で54.2%,コドモオス36.0%,オトナメス46.6%,コドモメス29.0%,群れが移動する時にはそれぞれ33.0%,36.6%,46.9%,44.2%であった。
群れの多数の個体が休息していたとき同調していなかった割合は,オトナオスの場合には平均で24.9%,コドモオス39.5%,オトナメス26.2%,コドモメス31.9%,群れが移動時にはそれぞれ42.1%,36.3%,34.3%,23.9%であった。これらの結果は,アクティビティの同調において性年齢クラスによる役割の違いがある可能性を示唆している。