抄録
愛媛県大洲市肱川町敷水の石灰岩の裂罅堆積物から見つかったニホンザル頭骨化石を再検討した。敷水頭骨化石は1960年頃に発掘され,同地点から産出した動物相から後期更新世の化石であると考えられた。敷水頭骨化石は左右の頬骨弓と上顎切歯,犬歯,小臼歯が欠失しているが,頭骨の大部分は残っている。
Iwamoto(1975)は,敷水頭骨化石を詳しく観察し,中国北部の中期更新世の堆積物から見つかった頭骨化石Macaca robustusとの形態的類似を指摘した。M. robustusは,現在中国南部や東南アジアに分布するチベットモンキーやベニガオザルの祖先である可能性が指摘されている。敷水頭骨化石とM. robustusの形態的類似が系統的近縁性を意味しているのであれば,ニホンザルとは別の系統の種が日本に侵入していた可能性,あるいはM. robustusがニホンザルの祖先である可能性が考えられる。
これまでに筆者らは,頭骨内部構造である鼻腔の形態がマカク属の系統解析に有用であることを示してきた。今回は,敷水頭骨化石をCT撮像し内部構造を解析するとともに外表形態を定量的に解析し,ニホンザルを含めた現生マカク種と比較した。今回の発表ではその結果を報告する。
Iwamoto, M. (1975). Primates 16(1):83-94.