霊長類研究 Supplement
第25回日本霊長類学会大会
セッションID: P-23
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ポスター発表
餌付け群ニホンザルにおける移動中の停止・見回し行動
*本郷 峻
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抄録
群れで生活する霊長類の群れ内他個体に対する視覚的行動について,これまでは休息時や移動開始時を対象とした研究がなされており,それについて,他個体による攻撃的交渉に対する警戒(ビジランス)や後方の追従個体の監視(モニタリング)といった視覚的行動の目的が報告されてきた。
しかし,遊動中の個体を観察した研究は少なく,移動中の視覚的行動を定量的に分析し,その目的について明らかにした研究はほとんどない。この研究では,嵐山E群と呼ばれるニホンザル(Macaca fuscata)集団のオトナ・ワカモノメスを対象に,移動中に短時間停止して頭部を回転させる行動(停止・見回し行動)を個体追跡によって観察した。
採食条件の異なる(人工的に与えられる餌を食べるか,山中の自然食物を食べるか,など)複数の移動状況ごとに,ビデオ解析によって停止や見回しの頻度などを算出し,比較した。
その結果,移動状況によって停止・見回し行動に違いが見られた。山中の自然食物を目的とする移動の際には,人工的な餌を目的とする場合と比べて1回の停止時間が長く,また広範囲をゆったりと見回していた。
また山中への移動の際には順位が低い個体の方が,より高頻度で,かつ広範囲を見回すことがわかった。これらの結果から,人工的な餌を目的とする移動では近接他個体に対する警戒のために停止・見回しを行っているのに対し,山中の自然食物を目的とする移動での停止・見回し行動には,(1)他個体の位置や進行方向の把握,あるいは(2)採食地の探索という目的があると考えられる。これら2つの停止・見回し行動に関する仮説は,この行動に順位差がみられる事に妥当な説明を与えられる。
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© 2009 日本霊長類学会
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