霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: P-22
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ポスター発表
タイ・カオクラプック保護区に生息するベニガオザルの第1位オス交代とオスの移出入
*丸橋 珠樹NILPAUNG Warayut浜田 穣MALAIVITNONG Suchinda
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抄録
 タイ王国Khao Krapuk Khao Taomo保護区(東経99度44分、北緯12度48分)に生息しているベニガオザルを2007年から継続調査している。この保護区には少なくとも3群が生息しており、2010年8月には、集中して調査を継続しているTing群が69頭、そのほかの2群は多少の推定誤差はあるが、80頭、53頭で、総数200頭強の個体群である。この個体群は急峻な岩山や周辺の保護区森林にに生息し、岩山下の寺で餌を得るという半野生状態で、周辺の農地を荒らしている。この保護区周辺は広く農地開発が進み、20頭足らずの同じく岩山と寺に生息する最も近隣の個体群とは10数キロ離れている。
 主調査群は、個体追跡できるほど人付けが完了し、2007年以来、主要なオスとメスは個体識別を継続している。ただ、隣接2群についてはすべての個体識別が完了しているわけではない。
 2010年3月と半年おいた2010年8月との間に、情報によればTing群の中心オス1頭が死亡した後、群れの第1オスの交代が起きた。2007年から2010年3月までは、Ting群の中心的オスは同じメンバーシップと順位関係が安定して保たれており、オスの移出入は観察されていなかった。
 今回の事例では、旧第1位オスは第4位に順位下落し、群れのなかで中順位であったオスが2頭、新第1位と第2位に順位上昇した。第2位であったオスは、第3位として、旧第1位と順位交替が起きた。この社会変動のなかで、下位順位の若いオス2頭が消失したが、近隣群では確認されていない。
 一方、出自群が判明しているオスの加入が3頭、加入前の群れが判明していないオスが3頭、合計6頭が加入してきた。2007年から2010年まで、オスの移出入が観察されなかったが、この第1位オスの交替を契機に多くのオス移出入が集中して起きた。また、この第1位オス交替後、群れ間の関係も変化し、2007年以来Ting群が独占的に利用していた遊動域に他の2群が侵入し、Ting群が劣位群として逃げるという状況が起きている。本発表では、ベニガオザル半野生群における順位変動とその社会生態学的意義について考察する。
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© 2011 日本霊長類学会
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