理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-23
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ポスター発表
多発性筋炎・皮膚筋炎患者における下肢筋力と呼吸筋力の経時的変化の相違
西川 裕一島田 昇平田 和彦植田 一幸伊藤 義広越智 一秀木村 浩彰松本 昌泰
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キーワード: 呼吸筋, 経時変化, 筋炎
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抄録
【はじめに、目的】多発性筋炎(PM)および皮膚筋炎(DM)に対する早期理学療法は,クレアチンキナーゼ値(Creatine Kinase;CK)の正常化とともに少しずつ運動負荷を加えていくことが原則である.それ故,PM,DMは炎症所見が沈静化した亜急性期においても全身状態が不安定という理由から臥床期間が延長する傾向にある(阿部:2007).一方,必要以上の安静は廃用性筋萎縮や心肺機能の低下を招き,機能障害の慢性化が危惧されており,早期から理学療法を実施することの重要性が謳われている(Hicks et al:1993,Escalante et al:1993).先行研究では,急性期/亜急性期からの早期理学療法は運動負荷量の設定や四肢筋力の経時的変化に関する報告が多く(山内ら:2011,Cecilia et al:2003),呼吸筋や呼吸機能に関する報告は少ない.本研究の目的は,PM,DMの下肢筋力および呼吸筋力の経時的変化に着目し,その臨床経過を明らかにすることとした.【方法】当院にて,2012年4月から10月の期間にPMまたはDMと診断された3症例(PM2名;症例1,2,DM1名;症例3)を対象とした.測定項目はCK,膝伸展筋力および呼吸機能検査項目とした.測定は理学療法開始時から毎週行った.膝伸展筋力の測定は,ν-tas F-1(アニマ株式会社)を使用した.呼吸機能の測定はオートスパイロ(ミナト医科学株式会社)を使用し,%肺活量,1秒率,PImax,PEmaxを測定した.入院期間中の理学療法は5回/週,2単位/日の頻度で実施した.運動負荷量は修正ボルグスケールを指標に持久力トレーニングおよび呼吸筋トレーニングの負荷量を設定した.また毎週1RMを測定し,60%1RMの負荷量による下肢筋力トレーニングを実施した.理学療法介入期間は,症例1は17週間,症例2は8週間,症例3は4週間とばらつきが見られたため,介入前と介入後4週経過時の測定値に統一して検討した.【倫理的配慮、説明と同意】対象者には,ヘルシンキ宣言に則り書面を作成し研究の趣旨,内容,結果の取り扱いについて説明を行い,署名にて同意を得た.【結果】症例1では,介入前のCKは9650U/L(peak10780U/L)であり,4週経過時には1450U/Lまで減少した.膝伸展筋力は介入前と比較し4週経過時には左右ともに約340%増加した.PEmaxは約50%,PImaxは約20%,%VCは約14%増加した.症例2では,介入前のCKは5296U/L(peak6866U/L)であり,3603U/Lまで減少した.膝伸展筋力では右は約35%,左は約33%増加した.PEmaxは約80%,PImaxは約14%,%肺活量は約9%増加した.症例3では,介入時のCKは703U/L(peak10039U/L)であり,178U/Lまで減少した.膝伸展筋力では右は約36%,左は約31%増加した.PEmaxは約84%,PImaxは約17%,%肺活量は約7%増加した.全ての症例にてCKの減少,膝伸展筋力およびPEmaxの大幅な増加を示した. %肺活量,PImaxは若干増加を示す程度であった.また,全ての症例で介入期間中にCK増悪等の所見は認めず,理学療法の継続が可能であった.【考察】理学療法介入前の測定結果は,膝伸展筋力,PEmax,PImaxおよび%肺活量の全ての測定項目で低値を示した.先行研究(Braun et al:1983)にて,健常対象者と比較して筋炎患者ではPEmax,PImaxおよび%肺活量が低下することは報告されているが,それらの経時的変化についての報告は見当たらない.本研究結果から,全ての評価項目にて改善が見られているが,PImaxと%肺活量の改善遅延が顕著に認められ,呼気筋力と吸気筋力の変化に相違が生じていた.その一因として,PM,DMにおける筋線維typeの割合の変化が挙げられる.筋炎患者では健常成人と比較して横隔膜のtype1線維が減少し,type2線維では不変もしくは若干増加することが報告されている(De Reuck et al:1977,Dastmalchi et al:2007).また吸気筋である外肋間筋ではtype1線維が優位であり,呼気筋である腹直筋は逆にtype2線維が優位であることも報告されており(渡部ら:1990),PM,DMは筋線維の組織学的な変化からも吸気筋力の障害が示唆され,経時的な変化に影響を及ぼしたと考える.【理学療法学研究としての意義】PM,DMにおける呼気・吸気筋力に関する調査は少なく,経時的に下肢筋力と呼吸筋力の変化を検討している研究は本研究が初めてである.本研究より,下肢筋力だけでなく呼吸筋力に関しても経時的変化を検討していく必要性が示唆された.
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© 2013 日本理学療法士協会
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