抄録
ニホンザルは,日本の固有種であり,在来生態系の重要な構成員である。また,人間をのぞく霊長類において世界最北限に分布し学術的にも貴重である。しかし,近年,同じマカカ属のタイワンザル,アカゲザルが野生化し,交雑を引き起こすという重大な問題が生じている。その他,在来種では起こりえない他種の捕食などによる生態系に与える影響について心配されるが,科学的に検証されていない。
日本霊長類学会は,要望書を提出するなどにより,行政に対策を求め,科学的な観点から助言し,地域での取り組みを支援するとともに,独自の調査を行ってきた。そこで,今までの調査,対策の成果を会員のみなさまに報告するとともに,課題を整理し,今後の対応の方向付をする。
プログラム
・わが国の外来マカク問題の概要
・下北半島のタイワンザル問題(群れ根絶の報告)
・和歌山のタイワンザル問題(根絶間近の近況)
・千葉のアカゲザル問題(ニホンザル個体群内での交雑確認)
・遺伝と形態(交雑の影響)
・コメント
・討論