抄録
オナガザルの仲間では、群れが分裂する例は数多く観察されているが、群れの融合事例はほとんど知られていない。ニホンザルやベルベットモンキーの例では、群れの個体数が極端に少なくなったときに隣接群に吸収される形で群れの融合が起こっており、「移入」と呼ぶ方が適当ではないかと思われる例もある。もとの群れ個体から、この「移入」個体に対して攻撃的交渉や親和的交渉が生起するかどうかはそれぞれの報告によって異なり、一定の傾向が見られるわけではない。
ウガンダ共和国カリンズ森林に生息する3種のグエノンは、いずれも単雄複雌群を形成しており、群れ間は敵対的である。このうち、ロエストモンキーにおいて、2009年10月に群れの融合が観察された。その後、2011年12月に至るまで、2群は融合したままである。本発表では、融合後の群れの個体間関係について予備的な観察をおこなったので、報告する。
調査期間は2011年11-12月の約2ヶ月間である。群れの構成はオトナオス1、若オス3、オトナメス2、若メス2、コドモ4の計12頭である。前半に個体識別をおこない、識別が完了した後半の観察期間中のグルーミングと攻撃的交渉の組み合わせについて分析した。
グルーミング相手の数は4~11頭で、全ての個体とのグルーミングを観察できたのは若メスだった。オトナオスと若オス、若オスと若オスの組み合わせでは、グルーミングが一度も観察されなかった。全ての個体が、同じ群れ出身個体、違う群れ出身個体の両方とグルーミングをしていた。敵対的交渉はほとんど見られず、軽く威嚇する程度だった。これらのことから、異なる群れ出身の個体間でも、群れの融合後に親和的な社会関係を作り上げることができることが示唆された。今後、データの量を増やし、個体間の親疎関係を明らかにし、血縁の有無が社会関係に影響しているかどうかについても調べる予定である。