霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: A-11
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口頭発表
テナガザルにみられるトランスポゾンのゲノムへの影響:新規因子の形成と増幅
*原 暢古賀 章彦Baicharoen Sudarath平井 百合子平井 啓久
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抄録
 ヒトのゲノムの約 45 %はトランスポゾン由来とされており,動いているトランスポゾンとして4種類が知られている.SVAはその一つであり, 遺伝子に転移して様々な病気を引き起こす例が知られている. しかし,ヒト上科の進化の過程で生じたはずのSVAの中間体やそれに関連する因子は未だに報告されておらず,どのような機構でこの複合型因子が生じたのかは明らかではない.そこで我々はSVAのVNTR領域に着目してその探索を行った.VNTR領域の起源となった小型の因子はすでに知られており,この因子はVNTRと97 bp の特異的な3‘配列から成っている.そこでこの因子と何らかのDNA配列が結合した複合因子を仮定し,その検出を試みた.そのため,まず97bpの特異的な配列を用いて,各種霊長類データベースでの相同性検索を行った.その結果,ホオジロテナガザル (Nomuscus leucogenys) ゲノムにおいて,仮定する因子を実際に発見した.この配列はSVAのSINEの部分がプロスタグランジン還元酵素 2 様 (PTGR2-like) 遺伝子の一部に置き換えられた構造をしており, 我々はこれをSr-SVAと名付けた.Sr-SVAがどのように生じてきたかについては以下の2つの説明が可能である.1) SVAと同様のメカニズムでSVAとは独立に形成された.2) SVAが組み換えを起こし形成された.塩基配列の特徴は前者を支持している.また,ゲノム中のSr-SVAのコピー数はSVAより数倍多く,転移頻度がより高いことが推測される.よってPTGR2-like遺伝子の部分は転移反応に関するエンハンサー領域を含んでいるものと予想される.
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© 2012 日本霊長類学会
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