霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: A-25
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口頭発表
野生チンパンジーの遊びの社会的ネットワーク分析
*島田 将喜
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抄録
目的
野生チンパンジーの社会的遊びでは、ある瞬間に形成される遊びの繋がりにおけるインバランスな関係を避け、バランスした関係を維持しようとする結果、大きいクリークは不安定になり、相称的なダイアドクリークへと縮減する。一方複数のダイアドの遊びが同時に狭い空間内で生じ、その結果大きな遊びクラスターが形成される。比較的大きな遊びクラスターを分析し、そのネットワーク上の特徴を個体の遊びへの積極性と中心性の観点から検討した。
方法
タンザニアマハレ山塊国立公園のMグループのチンパンジーを対象に約二ヶ月間、デジタルビデオカメラを用いて社会的遊びを記録した。一分単位の観察ユニット(OU)を設け、そのOU内にある個体が別の個体に遊び行動を向けたかどうかによりOUの社会的遊びの有無を定義した。10m以内で生じた一分以内に連続する社会的遊びのはじめから終わりまでに参与した個体の繋がりを遊びクラスターとし、符号なし有向グラフとして扱った。サイズが4以上の遊びクラスターのそれぞれにおける、各個体の出入次数・出次数/入次数中心性・参与時間を算出し、グラフ中心性を求めた。
結果と考察
各個体の遊びクラスターへの参与時間は、性に関わりなく年齢カテゴリーが上がると短くなるが、参与者数が多いクラスターほど、長かった。長く参与する個体の入次数・出次数中心性はともに高かった。二つの中心性の間には有意な正の相関関係があった。各遊びクラスターのグラフ中心性は低い値に集中した。グラフ中心性が高い場合であっても、中心的な個体は不特定であった。これらの結果は、そのクラスターにおいてより遊びに積極的な個体が、ある瞬間には一個体のみと相称的に遊ぶものの、経時的にはより多くの他個体に遊び行動を向け、他個体から遊び行動を向けられることで、結果的に多くの繋がりをもつ中心的個体となり、積極的でない個体は周辺的個体となることを示唆する。
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© 2012 日本霊長類学会
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