霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: B-17
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口頭発表
大型ヒヒ族Procynocephalus wimani(中期更新世、中国)の鼻腔構造とその系統的位置について
*西村 剛矢野 航伊藤 毅EBBESTAD Jan Ove R.BERG-MADSEN Vivianne高井 正成
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抄録
Procynocephalusは、後期鮮新世から中期更新世にかけて、インドから中国にわたる地域に生息していた地上性の大型ヒヒ族ザルで、現生マカク系統に近いと考えられている。ほぼ同時代にヨーロッパなどユーラシア西部から産出するParadolichopithecusとのシノニムがよく議論される。後者では、タジキスタンKuruksay産sushkini種では上顎洞があるに対して、フランスSenèze産arvernensis種(タイプ種)や中国龍担産gansuensis種ではみとめられない。
 Pro. wimaniのタイプ標本(前期更新世、中国新安産、スウェーデン・ウプサラ大学進化博物館蔵)は、M1-M2の境から後ろの右上顎骨と鼻腔内を埋めたマトリックスが付着している標本(PMU-M3652a)を含む。本研究では、その新安標本を高解像度CTで撮像し、鼻腔構造について比較検討した。
 新安標本では、下鼻甲介骨のほぼ全体がマトリックス内で保存されていた。それを参照して分析したところ、上顎骨は海綿質骨に占められ、上顎洞はまったく形成されていないことが明らかになった。また、鼻涙管の後方の中鼻道には、下鼻甲介骨で形成される小さな嚢状構造が確認された。この嚢状構造は、現生種ではゲラダヒヒにのみ同様のものが確認された。
 上顎洞の形成は、現生ヒヒ族系統ではマカク(亜族)系統のみにみられる派生的特徴とされる。新安標本は、Senèze標本らと同様、少なくともマカクの冠系統には属しないと考えられる。ゲラダヒヒに特徴的な形質もあることから、むしろヒヒ亜族系統に含まれるのかもしれない。上顎洞の有無からみると、中央アジアに進出したPara. sushkiniは他の大型化石ヒヒ族とは独立した系統であり、Pro. wimaniはヨーロッパから南アジアを経由して中国に進出した系統と考えられる。
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© 2012 日本霊長類学会
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