霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: P-17
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ポスター発表
チンパンジーにおける「顔らしさ」の知覚
*友永 雅己
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抄録
 われわれ人間は、身の回りにある物に対して「顔」を見つけてしまうことがある。このような現象は「相貌的知覚」と呼ばれており、これまでにもいくつかの研究がなされてきた。顔ではない物体に顔を見つけるのは、そこに、顔一般に含まれる知覚的な特徴が存在するためである。つまり、水平方向に並んだ2つの物体とその下方に位置する物体からなる逆三角形状の配置が存在すれば、人間はそこに顔を発見する。これは、人間による顔知覚における全体的処理を示唆する間接的な証拠でもある。このような、物に「顔」を見出すような知覚が人間以外の種にも存在するのだろうか。個々の特徴をベースにした知覚ではなく、それらの空間布置を手がかりにして顔を知覚する種であれば同様の現象がみられる可能性が高い。そこで、6個体のチンパンジーを対象として様々な事物の写真の中から「顔らしい」写真を探し出す視覚探索課題を与え、この問題の検討を行った。まず、インターネット上から収集した「顔らしく」見える物の写真をそうでない物の写真5枚の中から見つけ出す条件と、果物が写った写真を見つけ出す条件を用意した。さらにそれぞれについて、正立提示、倒立提示、および「目」状の構造の直下で左右にずらす加工を施した写真の提示の3種類の提示条件を用意した。実験の結果、容易にカテゴリ化できる果物の写真を見つける場合(正答率61%)よりも「顔らしく」見える写真を選ぶ方が明らかに成績が悪かった(38%)。ただし、果物の写真の場合には提示条件間の差が見られなかったのに対し、「顔らしく」見える写真の場合、上下をずらして提示した場合の方が(33%)、他の条件(平均41%)に比して正答率が有意に低下した。このような操作による成績の低下は全体的処理の特徴であることが知られているため、チンパンジーにおいても「顔らしい」写真を本物の顔のように処理している可能性が示唆された。
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© 2012 日本霊長類学会
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