抄録
2002年から活動を開始した「大型類人猿情報ネットワーク(略称GAIN)」は10年間の活動を経て、2012年に第3期を迎えた。本活動は、国内飼育下の大型類人猿の基礎情報の収集・整理、非侵襲的手法での研究利用推進などのための研究者と飼育施設とのネットワーク構築を目的とし、文部科学省「ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)」の一環として実施されている。第1期・第2期では、国内で飼育されているすべての大型類人猿についての家系や経歴などの個体情報の整理をおこなった。チンパンジー(53施設332個体; 2012年4月1日現在、以下同)、ゴリラ(10施設23個体)、オランウータン(22施設52個体)のすべての個体の情報を把握し、ウェブサイトで一般に公開することができた(http://www.shigen.nig.ac.jp/gain/)。さらには、現地調査などにより、各飼育施設の現状や飼育の歴史についても情報収集・整備をおこなった。2011年度よりは小型類人猿テナガザルについての個体登録にも着手するとともに、ウェブサイトのコンテンツを英語にて発信している。第3期の開始にあたり、今後のGAINの情報整備の活動目標としては、1)個体情報のさらなる充実、2)国内での血統登録が整備されていなかった時期(1970年代以前)の情報収集、3)テナガザル類の情報収集への集中的取り組み、等が挙げられる。GAINにおいて統合・処理された情報は、飼育や研究のための資料として重要なだけでなく、動物福祉の推進にも貢献すると期待される。GAINの今後のさらなる発展のために、これまでの10年間を振り返り、活動紹介として報告したい。