抄録
今年度第3期を迎えるナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)「ニホンザル」は、生理学研究所(代表機関)と京都大学霊長類研究所(分担機関)の協力体制のもと、第一期(平成14~18年度)には繁殖母群形成・育成体制の構築、第二期(19~23年度)には提供事業を本格化、試行1回を含む6回の公募を行った。主に脳神経科学研究分野からの申請を対象に、厳正な審査を経て合計30の大学・研究機関に290頭を提供した。その成果論文は高次脳機能に関わる病態解明と治療、BMI、再生医療など多様な医療技術開発に寄与する基礎研究分野で公表され始めている。平成22年度には次世代シークエンサーによるニホンザルゲノム多型解析とブラウザ構築に着手、23年度は専門家の助言のもと、冊子「ニホンザルの感染症について」を編纂した。また、プロジェクトの意義を周知するため、ホームページ、公開シンポジウム、ニュースレターなどの広報活動を展開、研究者コミュニティの意見交換の場として、メーリングリスト、実験動物使用者会議などを運営、ニホンザルの適正な飼養に寄与する基礎データの蓄積、霊長類の実験使用をめぐる国内外の動向、実験動物福祉に関する最新情報の収集も行っている。事業の運営方針は、関連諸機関から実験動物学、霊長類の生態・飼育管理の専門家、法曹関係者なども含めて構成された委員会に、各分野の専門家をアドバイザーとして招聘し審議の上決定している。提供申請の審査に際しては、実験動物の福祉向上、実験の適正化に関連する法令、ガイドラインが遵守されていること、実験計画が各機関の実験動物委員会の承認を受けていること、サル生体を取り扱う研究者全員がプロジェクト主催の講習会を受講済みであることなどを条件とし、公平かつ透明性の高い運営と研究者のコンプライアンス意識の向上を目指している。本発表では活動内容の総括とともに、第3期NBRPへの展望について報告する。