霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: P-31
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ポスター発表
他個体の存在に対する野生ニシローランドゴリラ単独オスの応答
*坪川 桂子
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抄録
 近年,ニシローランドゴリラ(Gorilla gorilla gorilla)はマウンテンゴリラ(Gorilla beringei beringei)に比べて果実食性が高く遊動距離が長いなど,ニシローランドゴリラの生態学的な側面が明らかになってきた.しかし,直接観察の難しさからその社会に関する情報は未だ限定的である.オスは生活史の中で単独生活を経験することが分かっており,ニシローランドゴリラにおいても単独オスの存在が知られている.単独生活を送るニシローランドゴリラのオスはどのように他個体と関わっているのだろうか.本研究では,ニシローランドゴリラの単独オスを終日追跡し,重複した遊動域を持つ群れや単独オスとの出会いの頻度やその際の個体の応答を分析した.
 ガボン共和国ムカラバ・ドゥドゥ国立公園において,2011年9~10月と2012年1~3月の期間に,人に馴れた単独オス(個体名:ムル)の終日個体追跡を実施した.約252時間の直接観察中に,視界内に他個体が現れた事例を4事例観察した.3事例はムルと単独オス,1事例はムルと群れの出会いであった.単独オスとの出会いでは,全ての事例がムル又は単独オスが選好性の高い果実種を採食中に起き,その後ディスプレイを伴う敵対的交渉に発展した.一方,群れとの出会いでは,ムルが群れに気がついた直後に反対方向へ静かに速い速度で移動を開始し,敵対的交渉には発展しなかった.また,視界内には見えないが他個体のドラミングなどの音声のみが聴こえた事例も観察された.そのような事例の多くでは,ムルは採食の手を止めて発声個体のいる方向を数秒間見つめた後に採食を再開するという行動を示し,その方向へ移動して発声個体の視界内へ接近するという行動は一度も観察されなかった.単独オスのムルは聴覚情報を利用して他個体との出会いを避けながら遊動しているが,選好性の高い果実をめぐった競合が,時には単独オス同士の敵対的な社会交渉をうむということが示唆された.
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© 2012 日本霊長類学会
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