抄録
近年,仙台市ではニホンイノシシ(以下イノシシ)の被害が恒常化し,同市では防除,捕獲,生態調査の観点から対策を進めている.その生態調査の一環として実施された本調査研究はイノシシにGPS発信機(Followit社製 Tellus1D以下発信機)を装着し,得られたデータを被害対策に還元することを目的とした.イノシシは頭部から頸部にかけて寸胴型をしているので,ニホンザルやニホンジカと同様に首に発信機を装着した場合,短期間で脱落してしまう可能性が高い.このため本研究では発信機を胸部に装着し,頸部には補助用のベルトを取り付けてそれらを背部で結合させた.発信機の測位間隔は 30分に 1回とし,測位時間は 90秒に設定した(測位可能日数 :154~ 205日).結果,夏季に 46.0_の成獣メス(145週 ,小寺2007)と幼獣 5頭を囲い罠で同時捕獲し,成獣メスに発信機を装着,幼獣に耳標をつけて放獣した.しかし,首輪等の緩みが起因して装着後 5日で脱落した(第 Ⅰ期).同一グループを再捕獲し,回収した発信機の首輪等の再調節をして再び放獣した(第 Ⅱ期).第 Ⅱ期では放獣後 1か月で発信機に不具合が生じ強制脱落させて回収した.これらで得られたデータを ArcGIS Desktop9.3.1で解析すると,夜間は農地から 200m以内で休息し,夕方から農地に出没して被害を出すという行動パターンを繰り返した.そしてヤブが茂る雑草群落はイノシシの格好の隠れ場となり,15mの距離で花火を撃っても逃げなかった.花火を撃った影響もあるが,この間のイノシシの推定行動域の面積は最外殻で約 6.3k m2だった.本研究ではイノシシの被害対策には藪の刈り払いが重要である事が示唆され,夏季に集落に依存する行動特性が明らかになった.また,カメラトラップでは耳標をつけた幼獣が捕獲後に何度も檻に入ることが確認されている.