霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-161
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ポスター発表
ニホンザル加害群の資源選択におけるスケールニッチの評価
*望月 翔太*村上 拓彦
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抄録

 野生動物の生息空間を構成する景観構造は,動物の生息地利用に大きく影響する.生息地利用は,動物の生息地選択や環境選好性の結果であり,これらはスケールの定義により異なる事が明らかとなっている.近年,深刻な問題となっている野生動物由来の農作物被害は,動物の生息地選択の結果である.つまり,この問題に適切に対応するためには,スケールの概念を考慮した被害対策が必要になる.本研究では,新潟県新発田市に生息する野生ニホンザル(Macaca fuscata: 以下,サル)の群れを対象に,サル由来の農作物被害に対する要因分析を行った.サル由来の農作物被害発生地点(n=312)と未発生地点(n=312)の情報を使用した.被害に関係する環境要因として,広葉樹林の割合,針葉樹林の割合,林縁形状,草地の割合,住宅地の割合,林縁からの距離,広葉樹林からの距離,針葉樹林からの距離,草地からの距離,住宅地からの距離,水域からの距離,道路からの距離,防護柵の個数,警報装置の個数,防護柵からの距離,警報装置からの距離の 16変数を選択した.本論では,複数の群れに着目し,群れごとに農作物被害の発生要因をランダムフォレス法によって評価した.これまでの研究から,群れを考慮しない場合,農作物被害に発生に寄与する重要な環境要因は,広葉樹林の割合,林縁形状,草地の割合,住宅地の割合,針葉樹林の割合でることがわかっている.また,最も農作物被害を説明する空間スケールは被害地点から半径 1000m内の景観構造であることも確認されている.一方,農作物被害の形態は,群れの加害履歴によって様々である.つまり,景観の組成や形状からは表現できない群れ特有の空間スケールが存在するかも知れない.本論では,新潟県新発田市の地域個体群において一般化された情報を基に,群れごとの農作物被害を説明する空間スケールからニホンザル加害群の資源選択におけるスケールニッチを評価する.

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© 2013 日本霊長類学会
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