抄録
一般的に、メスにおける性行動の発現は性周期と密接に関連しており、排卵にむけて成熟した卵胞から分泌されるエストロゲンの作用によってメスは発情し、オスに対する性的受容性が高くなることが様々な種で知られている。一方で、ヒトを含む霊長類においては、性周期と同調しない形で起きる性行動も頻繁に観察される。加齢に伴い卵巣機能が低下した高齢個体に見られる交尾行動もその一つである。ニホンザル(Macaca fuscata)では、おおよそ25才で閉経が起こることが知られているが、これ以降も交尾行動が観察される。さらに、嵐山では最終出産から死亡までの間に見られる高齢メスの交尾頻度は、若いメスの交尾頻度と差がないとの報告もある。
本研究では、ニホンザルにおける閉経後の交尾行動に着目し、高齢メスの糞サンプルを用いたホルモン分析による性周期のモニタリングを行うと同時に交尾行動の観察を行い、性周期と同調しないタイミングで起きる性行動の内分泌的背景を明らかにする。
京都市で餌付けされている嵐山群の高齢個体10個体を対象に、交尾行動の観察および糞サンプルの採取を行った。観察期間は2012年10月30日から12月30日までの61日間で、対象個体の発情兆候、交尾栓や交尾行動を記録した。また、採取した糞サンプルから、EIA法により糞中性ホルモン代謝物であるEstrone conjugates(E1C)とPregnanediol glucuronide(PdG)量を測定し、性周期の推定を行った。本発表では、対象10頭のうち、交尾行動が観察された4個体と、交尾行動が観察されなかった6個体について、内分泌動態の比較および推定排卵の有無についてまとめた結果を報告する。