霊長類研究 Supplement
第30回日本霊長類学会大会
セッションID: A6
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口頭発表
ニホンザルにおける敵対的交渉後場面の親和的交渉に伴う音声行動
*勝 野吏子*山田 一憲*中道 正之
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抄録
敵対的交渉の直後(PC)には攻撃者と被攻撃者、あるいは周囲の個体の不安が高まる。さらに攻撃を受けるリスクも増加する。PC場面においてこれらの個体間で行われる親和的交渉には、不安や攻撃を受けるリスクを低減させるという利益がある。ニホンザル(Macaca fuscata)などが用いるあいさつ音声(girney, grunt)は相手に敵意がないことを示すシグナルであるとされている。この音声を相手の状態に応じて用いることは、PC場面において効果的であると考えられる。
本研究は、相手が直前に行っていた敵対的交渉や、自身や相手の不安の高さが、音声行動に影響するのかを明らかにすることを目的とした。嵐山ニホンザル群を対象とし、PC場面において攻撃者あるいは被攻撃者を追跡観察した。当事者間、あるいは周囲の個体との間に親和的交渉が生じた際にはあいさつ音声を伴ったかどうかを記録した。不安の高さの指標としてスクラッチを記録した。統制場面として、翌観察日の同時間帯に同じ個体の追跡観察を行った。
統制場面と比較し、敵対的交渉後に親和的交渉を行う際には、相手に音声を用いることが攻撃者・被攻撃者ともに増加した。一方、相手から音声を受けることは攻撃者では増加したが、被攻撃者では統制場面との間で違いが見られなかった。親和的交渉が非血縁個体間で行われた場合では、音声が伴う割合が高かった。敵対的交渉を行っていた当事者の属性や直前の交渉における役割が、周囲の個体が発声するかどうかに影響するといえる。敵対的交渉の当事者のPC場面におけるスクラッチ頻度が、当事者の発声に及ぼす影響を検討したところ、スクラッチ頻度が高いほど発声が増えるわけではなかった。ニホンザルのPC場面でのあいさつ音声は、敵対的交渉を行っていた当事者の不安の高さの表れであるとはいえず、普段関わりの少ない相手に対して自分の行動を予測可能にするシグナルや、相手に対しての宥めとして用いられる可能性が示唆された。
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© 2014 日本霊長類学会
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