霊長類研究 Supplement
第30回日本霊長類学会大会
セッションID: A8
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口頭発表
チンパンジーの長距離音声を介した相互行為と視覚を超えたゆるやかなまとまり
*花村 俊吉
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抄録
野生チンパンジーの単位集団のメンバーは、構成個体や持続時間がさまざまな一時的な集まりを形成しつつ、出会いと別れを繰り返す。この一時的な集まりを、その構成個体が互いに見える範囲にいるという意味で、対面パーティと呼ぶ。一方、いくつかの地域では、集団のメンバーが、主に音声を介して、視覚を超えたゆるやかなまとまりを形成することが報告されてきた。このゆるやかなまとまりを、その構成個体が出会いと別れを繰り返しながら遊動方向や場所を大まかに同調させるという意味で、遊動パーティと呼ぶ。タンザニアのマハレM集団では、前者の月別平均サイズは1年を通じて大きく変わらないが、後者のそれには大きな季節差がある(Itoh and Nishida, 2007)。
しかし、どの調査地でも、遊動パーティと音声との関連についてはほとんど研究されてこなかった。長距離音声・パントフート(以下PH)は、多様な場面で発声されるが、1~2km離れていても聴こえ、離れた個体どうしが鳴き交わすこともあるとされてきたため、遊動パーティとの関連がとくに期待される。
そこで、遊動パーティのサイズに大きな季節差(集合期と分散期)があるマハレM集団を対象に蓄積してきたデータを用いて、PHの鳴き交わしの定義を検討したうえで、月ごとに平均したPHの発声・聴取や鳴き交わし頻度、鳴き交わし率が、月ごとに平均した遊動パーティのサイズとどのように相関するかを調べた。その結果、各頻度は正の相関を示したが、鳴き交わし率は負の相関を示した。前者の結果は、大きな遊動パーティの形成に、PHを介した頻繁な相互行為が関連していることを示唆する。後者の結果は、これまでに報告してきた事例分析の結果を踏まえると、集合期と分散期で鳴き交わしのやり方に質的な差があることを示唆する。遊動パーティの形成には、音声だけなく出会いと別れの繰り返しも重要であるため、それとPHを介した相互行為との関連についても考察する。
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© 2014 日本霊長類学会
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