抄録
ヒトとニホンザルは甘味受容体のサブユニットであるTAS1R2のアミノ酸配列が90%以上一致する。このことからニホンザルの甘味に対する感受性はヒトに近いと考えられている。そこで本研究ではヒトとニホンザルの甘味に対する感受性をまず行動実験により比較検討した。
飼育下のニホンザルを用いて、天然に存在する糖であるスクロースと人工甘味料であるスクラロースの2種類の甘味物質に対する感受性を二瓶法により測定した。その結果、スクラロースに対する感受性はスクロースの50倍程度であった。一方、ヒトのスクロースおよびスクラロースに対する感受性を官能評価により比較したところ、スクラロースに対する感受性はスクロースの約600倍であった。反応曲線の比較から、ニホンザルのスクラロースに対する感受性はヒトに近かったものの、スクロースに対してヒトよりも高い感受性を示していることが示唆された。甘味は食物中の炭水化物の含有を示すシグナルとして機能することから、より甘味に対し感受性が高い方が採食行動において有利かもしれない。
甘味物質は舌に発現する甘味受容体TAS1R2/TAS1R3によって受容される。従ってヒトとニホンザルにおける甘味感受性の差の一つの原因として甘味受容体の糖に対する反応性が異なっている可能性が考えられた。ニホンザルとヒトの甘味受容体のアミノ酸配列の差がこのスクロース受容感度の違いに関与している可能性があるため、現在ヒトとニホンザルの甘味受容体TAS1R2/TAS1R3のアミノ酸配列比較を行っている。