霊長類研究 Supplement
第30回日本霊長類学会大会
セッションID: P8
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ポスター発表
海棲哺乳類トドに観察された逆さ水平遊泳と運動軸性
*藤野 健
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抄録
【はじめに】動物を空間に固定して考えると、脊椎動物の移動運動は関節回りの屈伸運動から成る周期的な反復回転運動と理解出来る。魚類~爬虫類ではこの回転運動の軸は体幹の背腹を通過する鉛直方向軸だが、哺乳類化に伴いこれが体幹の左右軸に次第に推移し、更に直立姿勢で前進(腕渡りと二足歩行)する霊長類では体幹の長軸且つ鉛直軸へと変遷したが、後に腕渡りの効率化を求め体幹上下間の逆回転性を獲得し二足歩行が完成した(拙論、ヒトの二足歩行能獲得に関する運動軸の変遷仮説)。これらは全て進行方向軸に対して直角な軸回りに反復運動を行って推進力を得る<尺取虫>式移動法だが、ではこれ以外の方法即ち進行方向軸回りのロコモーションは採り得るのか?【観察】新潟市水族館マリンピア日本海にて飼育されるトドEumetopias jubatus成体4頭(雄1、雌3)に、腹部を上に向けた泳法が定常的に観察されたので上記軸性の検討を含め報告する。2009年11月にビデオ撮影を行った。遊泳する個体が垂直な壁に行き着くと、その手前で腹部が壁面に向かう様に体幹を長軸回りに90度回転させつつ側方ターンするが、トドではその回転が更に90度進んで背腹逆転し泳ぎ続ける。その姿勢のまま前肢での羽ばたき推進も行う。息継ぎの後に、或いは水平遊泳中に体幹を進行軸周りに180度回転させる例も観察された。一方、近縁のアシカではターンの後に90度の逆回転を加え姿勢を戻す。【考察】トド、アシカ共に鰭化した前肢は体幹に対して明らかに動的なプロペラ、即ち回転発生+前方推進装置として機能し得ると思われるが、ボディサイズが大型化したトドでは、体幹の運動慣性の増大と共に前肢プロペラの回転制御能が相対的に低下し、背腹逆転して不利益を招く虞は有るが、姿勢復元を求めない可能性がある。この進行方向軸回りの回転性は主たる推進機構ではないが姿勢制御上必須のものと考えた。
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© 2014 日本霊長類学会
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