抄録
4属の類人猿(パン属、Pan paniscus、Pan troglodytes;ゴリラ、Gorilla gorilla、オランウータン、Pongo pygmaeus、シアマン、Symphalangus syn-dactylus)の第3-6頸椎(略称、C3-C6)について、旧世界ザルとの比較によりその特徴を抽出した。標準化した椎体背側の頭尾長は、C3-C6で大型類人猿がシアマンと旧世界ザルより短く、C3-C4でシアマンが旧世界ザルより短い。標準化した椎弓の頭尾長は、C4-C5でチンパンジーがゴリラ、オランウータン、旧世界ザルより短い。標準化した椎弓根の頭尾長は、C3-C6で大型類人猿がシアマンと旧世界ザルより短く、C5-C6でシアマンが旧世界ザルより短い。標準化した椎体頭側面の面積は、C3-C6で大型類人猿がシアマンと旧世界ザルより大きく、C4-C6でシアマンが旧世界ザルより大きい。標準化した椎体尾側面の面積では、C3-C6で大型類人猿がシアマンと旧世界ザルより大きく(C5-C6でのチンパンジーv.s.シアマンを除く)、C5-C6でシアマンが旧世界ザルより大きい。ところが、上・下の関節突起における関節面の幅と高さの比や標準化した関節面面積は、大型類人猿、シアマン、旧世界ザルで異ならなかった。標準化した椎孔の面積においても同様の傾向を示した。ただ、椎孔の幅と高さの比は、ゴリラとそれ以外の種(オランウータンを除く)、そしてシアマンと旧世界ザルで異なった。これらの形態学的差異をもたらすものは、旧世界ザルより体幹が起き上がっている類人猿と、そうではない旧世界ザルが、それぞれ異なる力学的ストレスを受けていることが一つの要因なのかもしれない。機能形態学的観点から議論を試みる。