抄録
四肢骨の頑丈性(robusticity)を表す尺度としては、断面2次モーメントや断面2次極モーメントといった材料力学的特徴がもっとも適していることは広く認められている。ただし、こうした断面性能を、骨標本を破壊することなく、算出するためにはX線CTなどの高価な装置が必要である。Stock and Shaw(2007)は、ヒトの四肢骨について、断面2次極モーメントが、シリコン型取りなどの安価な技術で測ることのできるtotal subperiosteal area(TA)ときわめて強い相関があることを明らかにした。そして、彼らは断面性能を計測するための装置が利用できない場合は、四肢骨の頑丈性の尺度としてTAを用いることを推奨する。TAは、シリコン型取りにくらべると高価であるが近年低価格化がすすんでいる3Dレーザースキャナーを用いても算出できる(Davies et al., 2012)。
本研究の目的は、1)断面2次極モーメントとTAとのきわめて強い相関関係がヒト以外の霊長類の四肢骨でも認められるのかどうかをたしかめること、そして、2)同一の骨標本から3Dレーザースキャナーと医用X線CTの両方を用いて算出したTAを比較し、計測技術に由来する誤差を明らかにすることであった。骨標本として京都大学霊長類研究所に所蔵されているニホンザルの第1~5中手骨と第1~5中足骨を用いた。現在までに、4個体分の骨標本について分析を終えている。ニホンザルの中手骨と中足骨では、断面2次極モーメントと3Dレーザースキャナーにより算出したTAとの決定係数は0.960であり、ヒトの四肢骨においてみられた決定係数にくらべると低かった。3Dレーザースキャナーにより算出したTAは医用X線CTを用いて算出したTAにくらべて大きかったが、両者間の決定係数は0.990であった。大会では、標本数をさらに増やし、再度同様の分析をおこなった結果を報告する。
本研究の一部は平成25年度および平成26年度京都大学霊長類研究所共同利用・共同研究により実施された。