霊長類研究 Supplement
第30回日本霊長類学会大会
セッションID: P25
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ポスター発表
タンザニア西部ウガラ地域の乾燥疎開林地帯に生息するチンパンジーの採食物
*吉川 翠*小川 秀司*小金澤 正昭*伊谷 原一
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抄録
タンザニア西部ウガラ地域の乾燥疎開林地帯でチンパンジー(Pan troglodytes)の採食物を調べた。この地域では落葉疎開林が面積の80%以上を占め、他には常緑林と草地が点在している。年間降水量は1,000mm未満で、チンパンジーの生息域のうち最も乾燥した場所の1つである。1995年から2011年に、ウガラの主に北東部のングェ(05°13.0′S, 30°27.5′E)と中央部のブカライ(05°26.8′S, 30°44.1′E)で糞分析を行い、直接観察も併用して、チンパンジーの採食物を判定した。その調査の結果を、ウガラの複数個所で短期的に行われた調査(Nishida, 1989; Moor, 1994)とウガラ中央部のイサで行われた調査(Hernandez-Aguilar, 2006)の結果と合わせて、ウガラ地域のチンパンジーの採食物を総括した。その結果、(1)ウガラのチンパンジーの採食種数と部位数は、熱帯雨林地帯のチンパンジーのものより少なかった。乾燥疎開林地帯では熱帯雨林地帯より樹木本数と種数が少なく、採食できる果実量と種数が少ないためかもしれない。ただし、(2)ウガラのチンパンジーの採食種数と部位数は、他の乾燥疎開林地帯のチンパンジーのものよりも多かった。(3)ウガラのチンパンジーは、熱帯雨林地帯よりも多く植物の根を採食していた。根の採食は果実の欠乏を補っているのかもしれない。(4)ウガラのチンパンジーの哺乳類食は、熱帯雨林地帯よりも少なく、大中型哺乳類は一度も食べられていなかった。ウガラではパーティサイズが小さいために集団での狩りが困難であると推測される事と,他の調査地で頻繁に獲物となるアカコロブス(Procolobus badius)がウガラではごく一部にしか生息していない事が、ウガラで哺乳類食が少ない原因かもしれない。
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© 2014 日本霊長類学会
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